
発表されないまま眠っていた小説を編んだレトロスペクティブ。書き手が通り過ぎてきた時間の堆積を、一冊にすくい上げる試みである。表紙は青一色で刷られた緻密な静物画。果実や葉、こぼれ落ちる種子が古典絵画の構図で並び、銅版画のような細線が画面を覆う。その上に蛍光イエローの太いタイポグラフィが横切り、タイトル文字が古典の図像を上書きするように発色する。沈黙していた言葉が今、声を取り戻す——その瞬間が一枚の図像に閉じ込められている。
著平沢逸
装丁川名潤
カバー写真竹之内祐幸
講談社 / 2024年
文学・評論