
市井の人々の喪失と再生をすくい上げる短篇集。日常の片隅でうずくまる人物たちに、空の青さがふと差し込むような時間が描かれる。カバーは水色の空と白い雲、遠景に広がる街並み、手前の土手と草地を平らな色面で構成したイラストレーション。土手の上に立つ人物、座る人物、そして手前を歩く家族連れが点描のように散らされ、互いに少し離れたまま同じ風景を共有している。タイトルは縦三列に区切られ、雲を縫うように白抜きで配されることで、空と地続きの呼吸を生む。うつむきがちな心と、それでも頭上に広がる青を、一枚の遠景の中に同居させた装丁である。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論