
春に死んだ"あなた"の不在を、残された者が辿り直すように歩く——タイトルが告げるのは、喪失と再会のあわいに揺れる物語だ。グレーを基調にした表紙には、スマートフォンを見つめる眼鏡の青年と、赤いパーカーをまとい背を向けて佇む青年。二人のあいだを淡い桜の花びらが静かに流れ落ち、ふたつの輪郭はすれ違ったまま重ならない。タイトルは縦組みの白い細字で控えめに添えられ、余白の灰色が沈黙のように画面を満たす。会えない距離と、それでも探そうとする手の体温が、同じ一枚に閉じ込められている。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論