
ソ連体制下で生きる女性ピアノ教師マリーナを主人公に、抑圧と官能が交錯する一九八〇年代モスクワを描いた長篇。表紙上半分は黒地に蛍光ピンクの渦巻く光沢面が幾重にも重なり、中心へと吸い込まれるような同心円を成す。鏡面のような液状の質感が画面を覆い、その手前に白抜きの大ぶりな明朝体でタイトルが据えられる。下部には赤い帯が回り、宣伝文が縦組みで畳みかける。閉ざされた円環と滑らかな表面の張り詰めた光沢が、内に渦巻く欲望と体制の閉塞を同時に呼び起こす。

著済東鉄腸
装丁木庭貴信+青木春香
装画横山裕一
左右社 / 2023年
ノンフィクション