
オーダーメイドの靴を仕立てる職人「コルドニエ」のもとに持ち込まれる、客と靴をめぐる小さな謎を綴る連作。手仕事の現場に流れる時間と人の機微が、ひとつひとつの靴を通して立ち上がる物語のようだ。カバーはやや俯瞰の構図で工房を切り取り、磨き上げられた革靴を手前に、奥には作業中の職人と棚に並ぶ木型を描き込む。ランプの黄味がかった光が革と木の質感をあたため、タイトルは白い明朝で、サブタイトルだけを黄色い帯に黒文字で抜いて、日誌の見出しのように据える。手元の灯りに照らされた静かな仕事場の空気が、ひと組の靴に宿る物語をそっと予感させる。

著喜友名トト
装丁川谷康久
装画げみ
新潮社 / 2023年
文学・評論