
スマートフォン片手に椅子に腰かける女性を中心に据えた、現代の通信環境を背景に持つミステリ。電波の届く範囲=「圏内」をめぐる軽妙な探偵譚として展開する。黒地の背景には電波アイコン、「殺人事件」「炎上」「8888」などの文字、SNSやアプリのアイコンを思わせる色とりどりの矩形がノイズのように散り、画面のグリッチを思わせる縦縞が重なる。中央のイラストは線の細い柔らかなタッチで、デジタル空間の喧騒と人物の素朴さが対比される。タイトルは色分けされたタイル状の文字組で軽快に置かれ、情報過多の時代に潜む事件を等身大の視点から覗き込む構えを示している。
著焦田シューマイ
装丁川谷康久
新潮社 / 2025年
文学・評論