
静かに降りしきる雨のなかで、ふと立ち止まる人々の心の機微を描いた連作短篇。重なり合う痛みや迷いが、やがてやむ雨のように移ろっていく物語を予感させる。深い藍に滲んだ背景に、上から見下ろした傘の円形がいくつも浮かぶ。赤、黄、白、青と色とりどりの傘は雨粒のように散らばり、画面下にはうつむく人影がひとつ。手描きの絵の具のかすれが水面の揺らぎを思わせ、白抜きの明朝タイトルが静かに置かれる。降る雨の景色のなかに、人の気配がぽつりと灯る一冊。

著伊吹亜門
装丁坂野公一
装画水沢そら
小学館 / 2024年
文学・評論