
川越の活版印刷店を舞台にした連作短編集の一冊。手紙や活字を介して人と人がゆるやかにつながっていく物語が、雲海の上に立つ少女の姿を借りて描かれる。深い青から朝焼けのような橙へと滲むグラデーションが上下に広がり、その上を白い鳥が横切る。タイトルの明朝体は黄金色で大きく縦に配され、雲の透き間からこぼれる光と響き合う。背景に薄く漂う「傳」「届」の文字や活字を思わせるオブジェが、印刷という行為に託された想いの軽やかな運ばれ方を示している。

著ミラン・クンデラ、西永良成
装丁田中久子
装画横山雄
集英社 / 2024年
文学・評論