
中世イタリア・アッシジを舞台に、聖人の遺体消失をめぐる謎を追う長篇小説。出所不明の聖遺物や大聖堂で起きた怪異から「聖なる力」の正体を探る、史実を下敷きにした宗教ミステリの体裁を取る。表紙には祭壇画めいた宗教画を大きく引き、聖堂と人々の集う場面が深い青と土色のなかに沈む。タイトルは鮮やかな黄で縦に置かれ、画面端を縁取る欧文の小さなラテン語が祈祷文のような気配を添える。古びた色面と発光するような書体の対比が、信仰と疑いの境を見つめる物語の手触りを伝える。
著河野裕
装丁川谷康久
装画越島はぐ
新潮社 / 2020年
文学・評論