
インターネット上のメディアに集まった、市井の人々が語る怪異の記録をまとめた一冊。匿名の体験談が積み重なることで、日常のすぐ隣にある不穏な手触りが浮かび上がる。深い墨色の背景に、赤い花柄の着物をまとったおかっぱの少女が座り、手鏡を顔の前に掲げる。鏡面に映るのは本人の顔ではなく、白い花。背後には淡い後光のような滲みが広がり、足元には古びた和綴じの本が転がる。水彩のにじみを残した筆致が、輪郭をわずかに揺らがせる。語り手のいない物語が、こちらをじっと見返してくる感触を、装画が静かに引き受けている。
装丁清水肇
装画ヨシタケシンスケ
prigraphics / 2021年
文学・評論