
山で人が遭遇した不可思議な出来事を綴る怪異譚シリーズの一冊。霧の山中で見聞きされた幻影や気配が、静かな筆致で描き出される。表紙は青みがかった灰色のモノクロームで、絡み合う蔓や羊歯、朽ちかけた切り株、苔むした地面が緻密なペン画で覆い尽くされ、奥には霧に沈む木立が透ける。中央に貼られた白い短冊には、墨色のタイトルと添えられた朱の一文字だけが鮮やかに浮かび、湿った森の闇に小さな灯がともるよう。画面を埋める細密な描線そのものが、霧の奥から立ち上がる気配を視覚化している。

著妃川螢
装丁西村弘美
装画イシヤマアズサ
KADOKAWA / 2017年
文学・評論