
普通の人にはまず思いつかないような奇想が満ちた歌集の新装版。日常の言葉のなかに、ふと違和感や別の輪郭が滲み出すような一冊である。白地のカバーには、線だけで描かれた鳥や布のような図像がやわらかく置かれ、ピンクと青の輪郭がわずかにずれて重なる。印刷の色ズレを思わせる二重の線が、見慣れたものの像を静かに揺らがせる。タイトル文字は小さな枠で区切られて縦に並び、自分の正体がもう分からない、という逡巡の語感と響き合っている。
著くどうれいん、東直子
装丁北野亜弓
装画植松しんこ
左右社 / 2023年
文学・評論