
紅花から採れる紅(くれない)を巡る歴史の闇に、名探偵・浅見光彦が挑むミステリ長編。江戸期から続く紅の文化と現代の事件が交錯し、染料の赤がそのまま血の赤へと滑り落ちていく。表紙には、深紅のドレスをまとい背を向けてうつむく女性のイラストが、くすんだ青緑の地の上に静かに配置されている。布の襞のグラデーションと素肌の白さの対比、こちらに顔を見せない構図が、語られない秘密の気配を運ぶ。題字は黒の明朝で右肩に縦組みされ、艶やかな赤と沈んだ地色の均衡が、紅という色の艶と業の両面を一枚に閉じ込めている。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論