
日常のなかにふと差し込む違和を集めた、実体験を下敷きにしたホラー短編集。奇妙な生き物や見えないはずのものが、淡々とした語り口の隙間からせり上がってくる。表紙は夕暮れの校舎と無人のブランコを描いたイラストレーション。ピンクから紫へ沈む空、黒く張り出した枝、誰もいない遊具の鎖が静かに揺れている気配を残し、画面全体に薄い赤の膜がかかる。縦組みのタイトルは明朝体で白く抜かれ、帯の「実体験だから怖い」が太く重なる。見慣れた景色が裏返る瞬間を、色温度だけで予感させる一冊。

著一穂ミチ
装丁bookwall
カバー写真下村しのぶ
講談社 / 2021年
文学・評論