
精神科医でありミュージシャンでもある著者が、診察室の外でこぼれ落ちる思考や、発酵と人間の関係をめぐる「妄言」を綴ったエッセイ集。確かなようで不確か、不在のようで確かに在る——日常の輪郭が揺らぐ瞬間を掬い取る。表紙はやわらかな黄色の地に、手描きの太い筆文字でタイトルを大きく配し、その文字の輪郭をたどるように小さな人物や酒瓶、楽器、食卓の道具といった細密なイラストが散りばめられている。右下にはギターを抱えたくせ毛の人物が静かに立つ。賑やかなのに饒舌すぎず、線の余白が思考の隙間のように残る装丁が、揺れながら続く語り口とよく響き合っている。
著若林理砂
装丁佐藤亜沙美
ミシマ社 / 2018年
暮らし・健康・子育て