
漫画家の創作現場と、そこに流れる痛みや手応えを綴ったエッセイ的散文。描くという行為の生々しさを、机の上のささやかな道具たちが静かに照らし出す。カバーには、黒いランプ、インク瓶、ペン立て、描きかけのネーム原稿が散らばる作業机が油彩のような筆致で描かれ、木の質感とくすんだ色面が暮らしの体温を残す。上半分の絵と下半分の白地の対比、朱色で大きく刷られた著者名と書名の手書き調文字が、画面に小さな鼓動を打つ。誰かの机の奥にだけ宿る熱が、紙の上でひりついている。

著PerrinValérie、高野優、三本松里佳
装丁鈴木久美
装画agoera
早川書房 / 2023年
文学・評論