
小説家の夫と妻が、住み慣れた家からの引っ越しを考え始める——日常のなかで伸び縮みする時間の手触りを描いた長編小説。表紙は淡いレモンイエローを地に、中央へ水彩で描かれた室内の一片を配する構成。ピンクや藤色の壁面、花柄のクッションらしき形がにじむ筆致で置かれ、輪郭は曖昧なまま部屋の気配だけを残す。タイトルは黒の明朝で控えめに据えられ、絵の余白と呼応する。長い一日の、見過ごされてしまう密度をそのまま掬い上げたような佇まいの一冊。
著古川日出男
装丁佐々木暁
装画松本大洋
河出書房新社 / 2024年
文学・評論