
南洋庁勤務時代に妻子へ宛てた書簡や紀行を集めた一冊。パラオ、サイパン、ヤップなど南洋群島の風景と、そこで暮らす人々への眼差しが、家族への私的な言葉のなかに織り込まれている。深い青地に銅色で刷られた表紙は、舟を漕ぐ人、角を持つ獣、踊る人影、幾何学の文様といった南洋の民俗図像で覆われ、岩壁の刻画を写し取ったような線が連なる。下部に走る朱色の帯は「チビ共のこと、宜しく」と始まる手紙の一節を抜き、青と銅の静けさに体温を差し込む。遠い島々と、そこから届いた声の温度差をそのまま装幀に置いた一冊。

著楊双子、三浦裕子
装丁田中久子
装画Naffy
中央公論新社 / 2023年
文学・評論