
客足の遠のいた小さな商店街を舞台に、そこに生きる人々の日常と再生をすくい上げる連作小説。表紙はやわらかな桜色で染め抜かれた一本道のアーケードを正面から捉えた俯瞰のイラストで、両側には総菜屋や乾物屋らしき店先が連なり、奥には肩を寄せ合う数人の人物が小さく描かれる。アーチ門の桜飾り、湯気の立つ屋台、整然とした手描きの線が、賑わいの記憶と現在の静けさを同居させる。タイトルは大ぶりの筆致の明朝で道の上に置かれ、絵物語のような構図と相まって、通りそのものを主人公とする物語の入口になっている。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論