
明治期、北海道の開拓地で女医として生きた女性の波瀾を描く長編。窓辺に佇み外を見上げる白衣の人物、診察机に並ぶ薬瓶、洗面台、布のかかった寝台——往診室とも病室ともつかぬ室内が、窓から差し込む光に染め抜かれている。画面全体を覆うのは題字と同じ緋色で、影もまた赤い。タイトルの白文字だけがその赤の海から浮かび上がり、人物の小さな後ろ姿と呼応する。流れる「川」のように室内を満たす赤が、ひとりの女の生涯に降り注いだ光と血の両方を、静かに重ね合わせている。
著桂望実
装丁高柳雅人
装画Jiwoon Pak
光文社 / 2022年
文学・評論