
新選組を題材に、名を残さなかった隊士たちの姿を掬い上げる連作短篇集。表題作「夢の燈影」をはじめ、史実の余白にいたであろう無名の人々へ視線を注ぐ。深い焦茶の地に、新選組の象徴であるだんだら羽織が一着、解かれた紐を伸ばしたまま置かれている。脱ぎ捨てられたのか、置き去られたのか。山形の白は淡くにじみ、藍は土に沈むようにくすむ。周囲には黒い羽根が散り、白抜きの題字だけが灯火のように浮かぶ。装われていた者の不在を、布の質感そのものが静かに語りかける一冊。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論