
日常のなかで鳴り響く合図に耳を澄ますような、静かな語りの短篇を収めた一冊。鮮やかな青の地に、黒い背景を切り取って立つ少女像が据えられる。赤い帽子と白いセーター、青いスカートという三色の対比がフラットに塗り重ねられ、つぶらな瞳と控えめな微笑みが見る者を正面から受けとめる。タイトルと著者名は帽子と同じ赤で胸元に小さく刻まれ、絵の余白に音を響かせるように配されている。少女の佇まいと色面の静けさが、本のなかで鳴る微かな音への予感をかたちにしている。
著詠坂雄二
装丁川谷康久
装画つくみず
新潮社 / 2019年
文学・評論