
渋谷サイキックリサーチを率いるナルと、霊感を持つ麻衣たちが怪異と向き合う心霊探偵シリーズの第六巻。本作では海辺の旧家に潜む水の気配と、過去から呼び戻される不穏な記憶が物語の核となる。表紙は深い緑に沈んだ森と、その奥に静かに佇む木造の館を描いた装画が用いられ、手前の樹木と苔むした地面には淡い燐光のような粒子が点々と浮かぶ。タイトルは細身の白い明朝体で大きく中央に配され、湿った空気と微光の対比が、海の彼方から忍び寄るものの輪郭を、見る者の想像のなかにそっと立ち上がらせる。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論