
戦後の暮らしと労働、家族と自身の生をまっすぐな言葉で刻んだ石垣りんの詩を集めた一冊。家計や台所、職場といった日常の場所から、人間の尊厳をすくいあげる作品が並ぶ。表紙は深い青緑を地に、白い胸元と尻尾を持つ朱色の狐たちが四方から中央へ視線を向けるように配される。手描きの質感を残した塗りが柔らかな温度を生み、中央には淡いクリーム色のラベルが貼り込まれ、タイトルと版元名だけを静かに置く。素朴な絵柄の余白に、静かに耳を澄ます詩のたたずまいが重なる。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論