
家族という最も近い他者との軋みを、車という閉ざされた箱の中から描き出す長編小説。表紙にはメリーゴーラウンドの天蓋と、その下で長い黒髪を風になびかせる白いシャツの少女が淡い色彩で配される。赤と白の縞の屋根、ぼんやり浮かぶ白馬、空に滲む雲は、どこか郷愁を誘いながらも顔を隠した人物の不穏さを残す。タイトルは余白の大きな白地に手書き風の墨字で縦に流され、回り続ける乗り物のように逃れがたい血縁の輪郭を、柔らかな筆致で静かに浮かび上がらせている。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論