
架空の地方都市「がまくら市」を舞台に、五人の作家がそれぞれの謎を編む競作集。日常に潜む違和や小さな事件の輪郭を、地続きの街のなかで描き分ける一冊。表紙は漫画的な線で切り取られた路地の昼下がり。緑と菫色を基調に、電柱や家並みの影が長く伸び、黄色いシャツの少年と缶を手にした友人がガードレール越しに街を眺めている。タイトルは白い和文字を緑で縁取り、夕方前の湿った空気を涼やかに立ち上げる。町の穏やかさと事件の予感が、同じ画面のなかで静かに隣り合う。

著市川哲也
装丁西村弘美
装画まいまい堂
東京創元社 / 2023年
文学・評論