
目に見えない監視や情報の網にとらわれていく人々を描く、現代社会の不穏さを掬い上げた長篇。夜の商店街らしき路地に佇むひとりの人物を、シャッターの下りた店先と街灯の青、看板の朱が斜めの構図で取り囲む。アニメーション的な線とフラットな塗りで描かれたイラストレーションが、奥行きと閉塞感を同居させ、タイトル文字は白で抜かれて画面に張り渡された見えない糸のように浮かぶ。日常の風景の只中にこそ網は張られている——そう告げるような一枚である。

著望月麻衣
装丁bookwall
装画いとうあつき
ポプラ社 / 2023年
文学・評論