
タイトルに据えられた「正しい愛」と「理想」が、家族や親子の関係のかたちを静かに問い直す現代小説。淡いグレーの地に、丸く大きな頭を持つ人物がふわふわとした白い生きものをそっと抱き、黄色い八角形の上に腰かける装画が置かれる。柔らかな質感と簡素な輪郭、点で示された小さな目が、表情を読み手側にゆだねる。タイトルは縦組みのくすんだ赤紫で、白と黄の余白にしずかに溶ける。「正しさ」を声高に語らず、抱きしめる姿のほうで愛のかたちを示している。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論