
香港の街と暮らしを軽妙な筆致で描いたエッセイ。市場や食、人々の気配を辿りながら、観光地化以前の都市の手触りを掬い取る一冊で、初版から長く読み継がれてきた紀行文学の定番でもある。表紙には乾物店の店先らしき色鮮やかなイラストが据えられ、赤い円窓のような枠に「香港世界」の白抜き文字、上部に切り紙風の「Hong Kong」、下部には薄く「WORLD」の英字が重なる。市井の雑然と装幀の整理された幾何が拮抗し、過剰な賑やかさのなかに静かな眼差しを通す構成になっている。

著宇佐見りん
装丁佐藤亜沙美
装画Little Thunder
河出書房新社 / 2019年
文学・評論