
尾道の石段に佇む一軒の茶寮を舞台に、抹茶セットに添えられた「つくも神」が日常の隙間に小さな怪異と縁を呼び込む、土地の気配と人情に寄り添った連作小説。カバーは水彩で柔らかく描かれた坂の街の一景で、青いシャツの青年と着物姿の女性、その間に座る柴犬を、緑のあふれる木立と石灯籠が静かに囲む。タイトルは縦組みの明朝で大きく置かれ、副題は朱色の枠でひとつにまとめられて、絵と文字の余白に夕暮れ前のひとときが滲む。物語の「待つ時間」を、絵の落ち着いた光がそのまま受け止めている。

著喜友名トト
装丁川谷康久
装画げみ
新潮社 / 2023年
文学・評論