
東京下町の人形修理工房を舞台にした連作短編集の続編。古い人形に宿る記憶や、それを抱えて訪れる人々の機微を、静かな筆致ですくい上げていく。表紙には、開かれた白い扉の向こうへ歩み入る後ろ姿の人物と、手前に置かれた木の椅子、机に積まれた本らしき影。くすんだ黄緑と茶褐色を基調にしたパステル画が、室内のひんやりとした空気と斜めに差し込む光を柔らかく漂わせる。タイトル文字は明朝で控えめに配され、画の余白に溶け込む。誰かが去り、誰かが訪れる——その境界の一瞬を切り取った装画が、人形堂という小さな場所に流れる時間の手触りを伝えている。
著市川哲也
装丁水野哲也
装画荒川眞生
東京創元社 / 2018年
文学・評論