一覧に戻る文学・評論世界が赫に染まる日に櫛木理宇赫」の古字を据えた題が予感させるのは、日常の輪郭がゆっくり滲んでいく一日。グレーの闇に浮かぶ少年の顔には輪切りのトマトが重なり、果汁がこめかみから顎へ赤い筋を引く。傷とも涙ともつかぬその痕、抜けるように白い肌と銀の髪、絵画的な筆致で描かれた虚ろな眼差し——縦組みの白い題字だけが、その静けさに細い切れ目を入れている。果実が血を肩代わりする構図に、物語の不穏が静かに滲む。About出版社光文社判型文庫ジャンル文学・評論Credits装丁鈴木久美(角川書店装丁室)装画非Amazonで見る