
二十世紀の入口でパーシヴァル・ローエルが見た「火星の運河」を糸口に、世紀転換期アメリカの思想と科学・宗教・東洋幻想の交差を辿る人文書。表紙は深い火星色の赤を全面に敷き、中央上にひびや筋を走らせた黒い球体を据える。ローエルの描いた運河のスケッチを思わせる線が球面を走り、火星という観測対象そのものが図像化されている。下段には太く端正な明朝の縦組タイトルが配置され、赤と黒だけの構成が、観測と幻視のあいだに置かれた一人の旅人の輪郭を静かに浮かび上がらせる。
装丁水戸部功
青土社 / 2022年
文学・評論