文学・評論
ポイズンドーター・ホーリーマザー
湊かなえ
母と娘という、もっとも近しい関係にひそむ毒と祈りを描いた短編集。家族のかたちが裏返るとき、人はどんな顔をするのかを問いかける六篇が収められている。表紙では赤と灰、二層の地のうえに半透明の波形が幾重にも垂れ落ち、輪郭が滲んで重なる。赤は粘度を帯びて流れ、灰の領域へにじり寄り、どこまでが地でどこからが侵食なのか判別がつかない。タイトルと著者名は黒の明朝でひそやかに置かれ、流れる色面に飲まれることなく芯を保つ。境界が溶けていく不穏さを、静かな書体がかろうじて受け止めている一冊。