
チンギス・カンの若き日々を描く大河小説シリーズの第四巻。テムジンとジャムカ、メルキト族との一大決戦を軸に、草原に轟く戦の予兆が立ち上がる一冊。深い金茶に沈む地に、鬣をなびかせ睨み返す獅子か霊獣の墨絵がうっすらと浮かび上がり、その上に「遠雷」の白文字が大きく配される。筆勢のある画と端正な明朝の取り合わせ、白の帯に黒一色で組まれた縦書きのコピーが、東洋的な静けさと猛々しさを同居させている。装画の獣性と題字の沈黙が、遠くで鳴る雷鳴のような物語の気配を予告している。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論