
快楽を追求する都市「エピキュロポリス」の夢を繰り返し見る男を主軸にした長篇小説。リセットすれば何度でも殺せるという不穏な誘いが、悦楽と倦怠の境を行き来する物語を駆動する。漆黒の地に、輪郭を溶かした白いブレの人物像が二重三重に揺らぎながら浮かぶ。頭部のかたちすら定まらず、像そのものが夢の残像のようだ。タイトルは熟れた橙の縦組みで、闇に灯る街灯のように画面を貫く。実在感の薄い肉体と強い色温度の文字が、夢でも現でもない都市の温度を立ち上げている。
著桂望実
装丁高柳雅人
装画Jiwoon Pak
光文社 / 2022年
文学・評論