
地下鉄の階段を降りた先に立つひとりの男を、上から見下ろした構図のイラストレーション。父との確執を抱えた中年男が、地下鉄の階段を上るたびに過去の時代へと迷い込んでいく時間旅行小説の新装版である。画面全体を覆うのは赤みを帯びた朱のグラデーションで、踊り場の床に落ちる光の矩形と、奥の改札口に灯る駅名標の白だけが冷たく浮かび上がる。タイトルは大胆な明朝体を縦に配し、「メトロ」のルビが昭和の残響のように添えられる。色面の熱と階段の暗がりが、現在と過去が交差する物語の入口を静かに示している。

著EverettPercival、木原善彦
装丁鈴木成一デザイン室
装画吉田雨水
河出書房新社 / 2025年
文学・評論