
五十代の女性の日常と内面を、十二の断章で描く長編小説。伊藤整の同名作を下敷きにしながら、現代の結婚や老い、女性であることをめぐる思索が静かに重ねられていく。表紙は格子状に区切られた小さな絵を並べたコラージュ。切手や消印、ティーポットを持つ手、猿、古い看板といった断片が、赤・黄・青・緑の原色で貼り合わされ、版画のような筆致で描かれる。一枚ずつは無関係に見えて、並べると一人の人物の記憶のアルバムのよう。章立てそのものを視覚化した造本と読める。

著ミラン・クンデラ、西永良成
装丁田中久子
装画横山雄
集英社 / 2024年
文学・評論