
江戸の裏長屋を舞台に、物の怪に縁ある若者たちが怪異と対峙する時代小説シリーズの一冊。青い着物に刀を提げた青年と、黒猫を抱いた男、縁側の先で見つめ合う三毛と黒の野良猫が、長屋の縁先と苔むした庭石を背景に静かに配される。和紙のような淡いマット地に、墨で刷いたような黒い影が画面右上から忍び寄り、書き文字の題字を縦組みの枠が引き締める。緑青の植栽と藍の衣が涼やかに澄む一方、黒い染みが怪の気配をそっと差し込み、市井の暮らしと異界の境目を一枚に閉じ込めている。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論