
四国八十八ヶ所ではなく、瀬戸内の小豆島を巡るお遍路の道行きを綴った紀行。歩き、迷い、人と出会いながら島の起伏と信仰の輪郭を辿った記録である。表紙は線描のイラストレーションで、菅笠と白装束に身を包んだお遍路姿の人物を中央に据え、青緑と橙の二色だけで島影や波、樹々を刷り分ける。装束のあちこちには細い指示線で持ち物の名や工夫が小さな付箋のように書き込まれ、図解めいた賑やかさが旅装の実用と発見を物語る。引いた色数と詳細な書き込みが、淡々と歩を進めながら細部を見落とさない筆致と静かに響き合う。
著尾崎世界観
装丁古屋郁美
文藝春秋 / 2019年
文学・評論