
東京の片隅にある共同台所「すみっこごはん」を舞台に、世代も立場も異なる人々が食卓を囲みながら少しずつ心をほどいていく連作短編。雷親父と呼ばれる老人と少女がオムライスを介して交わす時間が、巻のひとつの核となる。深い若草色を地に、エプロン姿の女性、丼を抱える老人、フライパンを握る少年、レモンやにんじん、片手鍋やミトンといった台所道具が軽やかな線と平面的な彩色で散りばめられている。タイトルは縦組みで大きく置かれ、賑やかな絵柄を穏やかにまとめる。湯気の立つ厨房のざわめきと、誰かと食べる夜のあたたかさが、そのまま一冊の佇まいになっている。

著望月麻衣
装丁bookwall
装画いとうあつき
ポプラ社 / 2023年
文学・評論