
理系的な原理と日常の鳩、それぞれ異なる時間と立場の人物が交差する物語。深い藍に沈む夜空を背景に、軍服の男・スーツの青年・和装の女性が並び立ち、その周囲を白い鳩の群れが渦を巻くように飛び交う。地上には数羽が静かに佇み、灰色の地面と紺青のグラデーションが画面を上下に分ける。タイトルは明朝体の白抜きで縦に配され、装画の物語性をそのまま受け止めるように静かに置かれている。熱力学の語と鳥の群れ——秩序と乱雑さの間で揺れる構図が、書名の問いをそのまま視覚化している。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論