
グリム童話「白雪と紅ばら」を下敷きに、「のばらのいえ」と呼ばれる母子の家をめぐる姉妹の物語。逃げた娘と残った娘、愛と理想に縛られた女性たちの行方を描く長編。くすんだ薔薇色の地の中央に、暗い森と黄色いドレスをまとう二人の少女、足元に咲く赤い薔薇のタブローを細い装飾枠で額装し、絵本めいた寓話の気配を立ち上げる。帯の「歪んだ愛」と刻まれた桃色の活字が表紙の色と響き合い、童話の甘さと現実の苦みが一枚の絵のなかで静かに拮抗する。

著渡辺淳子
装丁鈴木久美
装画マメイケダ
光文社 / 2020年
文学・評論