
暗闇」「キッス」「それだけで」——中黒で短く区切られた三語が、夜のなかで交わされる一瞬の親密さを匂わせる。本書はその省略にこそ宿る感情をめぐる文学作品である。漆黒の地に浮かぶのは、焦点をはずされた光のかたまり。ビルの窓明かりらしき像が青白くにじみ、街の輪郭をやわらかく失わせる。タイトル文字は細い線描のステンシル書体で抜かれ、光と同じ階調で背景に沈みかける。視界の解像度が下がる瞬間にだけ立ち上がる気配を、装丁全体が静かに体現している。

著EverettPercival、木原善彦
装丁鈴木成一デザイン室
装画吉田雨水
河出書房新社 / 2025年
文学・評論