
小さなホテルの給仕から身を起こし、激動の二十世紀チェコを生き抜いた男の独白。皮肉とユーモアをまとった語りが、給仕という低い視座から歴史の表裏を映し出す。表紙では銀の盆を捧げ持つ給仕が、円柱と緋色の幕、大理石模様の窓を背に正面を向く。平面的なイラストレーションとくすんだピンクの地が、舞台装置めいた華やぎと、その奥に潜む静けさを同時に立ち上げる。仕える者が見上げてきた世界の眩しさと滑稽さを、一枚の絵が静かに引き受けている。
著BaconFrancis
装丁加藤賢策
求龍堂 / 2021年
アート・建築・デザイン