
1975年の横浜を舞台に、行方不明の父や「オス犬」、親友モリシゲらが交差する少年アキラのひと夏を描く長編。表紙はくっきりとした輪郭線で区切られた青空と海、白い積雲、黒い前景の崖、そして滑走路に佇む小さな人影と一機のグライダーを、版画的なフラットカラーで構成する。タイトル文字は鮮やかなシアンで縦に大きく抜かれ、黄色い帯がその下を強く受けとめる。郷愁を呼び覚ます色面の明快さが、やるせなさと光が同居する物語の温度をそのまま運んでくる。

著阿部暁子
装丁黒木香
装画げみ
集英社 / 2016年
文学・評論