
感染症が蔓延する北極圏の海上都市を舞台に、黒魚(オルカ)を従えた女が現れる近未来SF長篇。ジョン・W・キャンベル記念賞受賞作の翻訳である。表紙は深い緑を基調に、氷上に立つ赤衣の人物と白熊、林立する尖塔群、そして波間から覗くシャチを大胆な構図で配し、寒色のグラデーションが氷海と疫禍の気配を同時に立ち上らせる。タイトルは大判の白い和文字で四隅へ振り分け、英題と帯のシアンが画面を引き締める。物語の冷たい熱量が、版面の余白そのものから滲み出す一冊。
著平沢逸
装丁川名潤
カバー写真竹之内祐幸
講談社 / 2024年
文学・評論