
歴史を参照することで未来を照らせるはずだという前提が崩れた現在地から、戦後日本の「もう学ばない社会」のかたちをたどる評論。表紙は淡いグレー地に白の長方形を段違いに重ね、タイトル・著者・帯文・コピーをそれぞれの区画に整然と落とし込む構成。中央右寄りに置かれた青く沈んだ建設中スタジアムの俯瞰写真が、抽象的な静けさのなかに具体的な時代の像をひとつだけ差し込み、宙吊りのような現在感を生んでいる。図版と余白の関係そのものが、過去と未来をうまく接続できない時代の手触りを担っている。
著若松英輔
装丁名久井直子
亜紀書房 / 2021年
文学・評論