
誕生日の祝いの席に突然現れた女性をめぐり、食い違う記憶と過去の影が浮かび上がる長編小説。ポル・ポト政権下を逃れた来歴をもつ人々が、互いを試すように対峙していく。表紙は深い緑に沈む宵の庭園を絵画的な筆致で描き、木立の合間に細く連なる電飾の灯、こちらに背を向けて佇む三人の人影を淡く照らす。画面下には赤い椅子のシルエットが並び、祝祭の気配をかすかに漂わせる。白抜きの和文タイトルと筆記体の原題が、穏やかな夜景の奥にひそむ緊張を静かに浮かび上がらせている。
著千早茜
装丁川名潤
装画北澤平祐
集英社 / 2022年
文学・評論